「うーん・・・。俺は使うことないな。すげえ、うまいよ!さすが風花。高校のときも、よく風花の手料理とかお菓子を食べさせてもらったよな」

「お母さんが、料理上手だったからね。いっぱい教えてもらったし、よく一緒に作ったなぁ」

「あれ?風花は食べないのか?」

「私はいいの」

「あ、そっか。ユーレイは飲み食いしないんだっけ」

「うん。そうやって、いっぱい食べてくれるの、うれしい!」

風花の顔に笑顔がはじけた。

朝食をたいらげ、出勤の支度を整え、「じゃ、行ってくる」と声をかける。

玄関先に見送られ「いってらっしゃーい。なんか、新婚さんみたいだね」と鈴が鳴るように笑う風花を見たら、すごく気恥ずかしくなって、「じゃ」とだけ言いさっさと家を出た。

風花の甘い声の余韻がしばらく心に残っていて、くすぐったい。

風花が現れたことによって、飽き飽きした日常が一瞬にして素晴らしい世界へと一変し、まるで別人の人生に舞い込んだような新鮮な気持ちになった。