俺が彼女に会えない理由

「うるさい。とりあえず、俺が洗面台を使ってる間に、このジャージに着替えろよ」と、俺がジムで使うジャージを渡した。

「私たちには時間がないんだよ。今のうちに一緒に寝とかなきゃ。私、付き合ってたときから、冬弥くんとはそういうことしてもいいって思ってたし」

洗面台で歯を磨いている俺に向かって、そう話す風花の声が隣の部屋から聞こえてくる。

あのなぁ・・・と内心つぶやき、苦笑した。

部屋に戻ると、ジャージに着替え終わった風花が、「ユーレイでも、キスとか、そういうことはできるよ。試してみる？」と、困惑する俺を見て風花は楽しそうだ。

こちらが「いい大人」を頑張って演じている苦労をまるでわかっていない。

「別々に寝るぞ」と、ベッド脇の床下に敷いた布団に入る。