別に、今日が彼女の命日というわけでも、誕生日というわけでも、二人が付き合いだした記念日というわけでもない。

不意に、突然、理由もなしに、無性に彼女が恋しくなるときがあるのだ。

彼女は、どうして、いなくなってしまったのだろう?

運命というものが存在するならば、それを変える、あるいはそれに抗うようなものは存在しないのだろうか?

出会った人たちの中で、一番、愛おしい人がこの世の人でない場合には、どうしたらいいのだろう?

そこまで考えてしまってから、冬弥は我に返り、東京に向かう新幹線の車窓に目をやった。

流れゆく夜景ではなく、もの悲しい寂しげな男が目に入った。

自分のひどく打ちのめされた顔に、自分でも唖然とした。

気分を立て直そうと、彼女との楽しい思い出の数々を思い浮かべた。

小学校のときケイドロして追いかけたこと、高校受験を終えた真冬の改札口で緊張しながら声をかけたこと、成田のさくらの山公園で、何時間も空に飛び立っていく飛行機を眺めながら将来について語り合ったこと。

会いたい。

冬弥は心の中で、ささやいた。