俺が彼女に会えない理由

父親のいない俺にとって、孝仁さんは父親の温かさを感じさせてくれる存在だった。

キャッチボールを初めて教えてくれたのも、工具の種類を教えてくれたのも孝仁さんだった。

父親とは、こういうものだろうという存在感、そして父親が持っているであろう優しさと安らぎに触れることができた。

里花さんもまた、理想の母親像を見させてくれる存在だった。

母よりも、俺のことに気が付いてくれた。

小学校6年の、あの日、熱を出した俺を学校に迎えに来てくれたのも、看病してくれたのも里花さんだった。

日ごろは、カップラーメンかスーパーの惣菜を食べていると言ったら、里花さんは、急いで、野菜たっぷりのシチューを作ってくれた。

それらが、つい昨日のことのように思える。