「あんた、ほんとは喋れるんでしょ!?この前家族とカラオケに入って行ってたじゃない!なのに私たちには挨拶1つろくにしないで、本当に嫌味な子ね。あ、い、う、え、お!って言ってみなさいよ!」
そう言われながら頬をつねられても、私はなにも口にできなかった。
自分にもわからない、あそこでは喋れて、ここでは喋れない理由。
そんなものがわかれば、問題はとっくに解決している。
誰が好きとか嫌いとかじゃなく、ただ、声を聞かれることが不安で怖いだけなのだ。
誰か…、誰かに届け、私の心の声。
みんなの見えない場所で、私の心は誰よりも叫んでいた。
「俺のために生きて」。
他の、周りの声なんて気にしなくていい。
俺とだけ話してればそれでいい。
ゆっくりでいい。
焦らなくていい。
そう慰められている気がして、私は胸を張ってだんまりを貫いた。