「最近の人はね、忍耐力がないと思うの。宇宙から見ると国の形がくっきり見えてしまうくらいネオンのうるさい日本だけど、同じ場所で10分もじーっと空を眺めていれば、ずっとずっと奥の方の小さな星だって見えるのに。」
普段はそんなことを笑顔にするような性格。
でも今日は布団から1歩も出られずにいる。
それなのにハサミやカッターナイフだけは探そうときょろきょろ辺りを見回す。
いっそ、キッチンの包丁でもいい、なんて。
とことん落ちる鬱な日がやってきた。
なにかがさっきあった訳じゃない。
ただ単に普段の小さな無理のシワ寄せがたまたま今日やってきた、それだけだった。
昨日の夜目をつぶるまで、あんなに精一杯の気持ちで1日を感謝して明るい明日を願ったのに、その自分はどこへ行ったのだろうかと聞きたくなるくらいの別人だ。
「俺のために生きて」。
どこからか聞こえてくる声。
生きる意味が今すぐ見つからなくていい、わからないままでもいい、でもとりあえず今日だけ俺のために生きていて。
と、そんな優しいメッセージが届いた気がして、なにもできないままの私はせめてもの気持ちで自傷を思いとどまる。