「ヒサ!」
名前を呼ばれ振り向くと、そこに優也センパイが立っていた。
「ヒサ何やって……傘ないのか!?」
そう言いながら、雨に濡れビシャビシャになった私に傘をさしかける。
「傘……」
私はセンパイの後ろを見た。
それに気づき、センパイは後ろを振り返る。
「な……」
ここからでは声は聞こえない。
私の置いた傘の中で、猫たちが口を大きく開け、鳴いていた。
「おまえ傘を……」
「あの仔たち、かわいそうだったから……」
「はぁ……送ってく」
センパイは大きくため息をつくと、そう言ってグイッと私を傘の中に入れた。
