「……」
私は図書室を飛び出し、階段を駆け下りた。
外に出るための靴……1年の下駄箱が、図書室のあるB棟から遠いことが、ものすごくもどかしい。
外へ飛び出すと、センパイのいる2本の大イチョウまで走った。
ジメっと蒸し暑い風が吹く。
空もどんよりとした重い雲に覆われている。
梅雨が近づいている空気。
「優也センパイ!」
私は息を切らし、声をかけた。
「ヒサ」
私の声に驚いたように振り返った。
立ち止まると、汗が一気に吹き出るような暑さ。
見ると、緑の隙間からセンパイと話していたのは、年配のおばさんだった。
