「はい」
そう言うと、センパイはペットボトルのコーヒーを私に差し出した。
無言のまま、ペコリと頭を下げる。
温かい……。
受け取ったペットボトルから伝わる温かさ。
冷えた指先が、じんわりと熱くなる。
「今日から学校来るって聞いたからさ」
「……」
私は相変わらず、センパイと目を合わせられずにいた。
この間のことが、どうしても頭から離れない……。
「ヒサ、大森先生のこと聞いたよ……。
なんで、そんなことになったんだ?」
「……」
私はうつむいた。
「ヒサ……」
「……指輪、大森先生に取られそうになって……」
「この学校が厳しいことくらい、わかってたろ?
あんな指輪くらい没収されても、いつかは返してくれるのに……」
