「そっか」
センパイは微笑むと、そっとうつむいた。
「母猫は?サビ子。
サビ子は元気?」
「あぁ、サビ子も元気だよ」
「良かったー。
サビ子、仔猫のこと心配してないかなー」
「……」
私の言葉に、センパイの笑顔が消えた。
「センパイ?」
「……きっともう、覚えてないよ」
「え?」
「忘れてしまってる」
「そんな……」
「猫は仔猫を沢山産むんだ。
自分の仔だと、全て覚えてる猫はいないよ」
「……」
センパイ……。
どうしてそんなこと言うの……?
センパイはカバンを持つと、そのまま図書室を出て行った。
