急いでいたせいで、今まで全然気づかなかった。
何これ!?
「ヒサ!もう、どこ行ってたのよー!」
私の前に立つ友達が、振り返り声をかけてきた。
「あ……ごめん」
周りに聞こえないよう、コソコソ話す。
先生たちの目が光る。
この学校は、とにかく先生が厳しいと聞いたことがある。
私は気づかれないよう、急いで指輪を隠した。
「それではこれよりT学園高等学校入学式を執り行います」
講堂にアナウンスが響いた。
ざわめいていた生徒たちも、ピタッと静かになった。
ドキン
ドキン
なぜか私は、ドキドキが止まらなくなっていた。
握り過ぎた手は、汗で湿り始めている。
春とはいえ、まだ足元から冷えそうな冷たい講堂内。
それなのに、どんどん体は熱を帯びていくようだった。
だってそれは……
ドキン
ドキン
左手の薬指にはめられていた指輪、これは私が欲しくて欲しくて仕方なかった、あのペアリングだったから……。
