奈落と純愛


 黙っていると、陸は再び歌い始める。

 じっと聴きしれていたかったけれど、なんだかそれだとわたしの方がもらいっぱなしで、ずるくなる気がして。

 仕方なくわたしもその上に声を重ねた。


 好き。

 わたしも好きだよ、陸。と。



 屈託なく口にできないこのねじれた気持ちが、全部、歌に乗ればいい。

 そんなことを思いながら。