奈落と純愛


「俺の歌声」

「歌声はね。はい。そうですね」

「俺のことは?」

 言うか、バカ。

 ブランコの鎖にかけた手が、思わずぷるぷると震えてしまう。

「ふーん。俺は、香緒里のこと、好きだよ」

「あっ……そ」

 なにを言っているんだか。

 動揺で、声がうわずってしまったではないか。

 わたしが不安になった時、聞きたくてどうしようもなくて、言って、って頼んでも、恥ずかしいからやだとか、言うくせに。

 ふいうちで。なにそれ。ずるい。