奈落と純愛


 陸の歌は、素人離れしてうまかった。

 身内びいきかもしれないけれど、でもわたしは、死ぬほど好きだったりする。

 心地よく鼓膜をふるわせる低音。

 ブレスの抜き加減。

 アレンジの自由気ままさ。

 それと相反するような音程の正確さ。

 どこまでも伸びる声。

 音の尾のかすれ――。


 技術的にどうかは知らない。

 もっと上手いひとは、いくらでもいるんだろう。

 でもわたしにとって、これ以上好きな声なんて、この世にない。

 それくらい、好きだった。