奈落と純愛


 陸は釘づけにされたように月を見上げたまま、キィキィとブランコを揺らし。

 やがて鼻歌を歌い始めた。

 知ってる曲だ。

 もっとちゃんと歌えばいいのに、と思うと同時。

 一瞬で惹きこまれている自分を見つけてしまう。

 小さな囁きを、何とか拾おうとして。

 全神経が、耳に向かう。