奈落と純愛


 ブランコと砂場といくつかのベンチがあるだけの、フェンスに囲まれたちいさな公園。

 外周は緑豊かで、小路からはほとんど中が見えない。

 ……いや、まあ、見られて困るようなこと、するつもりはないけれど。

 勝手知ったるなんとかで、わたしがさっさとブランコに腰を下ろすと、陸はのんびりと近づいてくる。

 わたしの前まで来ると、陸はブランコの鎖に手をかけて、ほんの少し揺らした。

 キィ……と小さく軋むような音がして、わたしは結構ショックなんだけど、陸は気に留めていないようで、視線をあげて全然関係ないことを言う。

「今日、満月なんだな」

「……はあ」

 つられて振り返り、夜空を見上げながらも、あんまり天文関係に興味のないわたしは、若干低めのテンションで相槌を打った。