奈落と純愛


「なあ。どーすんの」

 当たり前、みたいに訊いてくる声に、ふいに不安がこみあげる。

 陸は、いつまでわたしと、一緒にいてくれるんだろう。

「いつものとこ」

「寒くない?」

「だいじょうぶ」

 だいじょうぶ、だけど。

 わたしはそっと、手を差し出す。

 ほんのちょっと、図々しいかなと思いながら。

 けれど、陸はポケットに突っ込んでいた手を出して、わたしの手を握り返してくれた。