奈落と純愛


 付き合うって言っても、具体的になにをすればいいのかわからなかったし。

 部活後に、たまにいっしょに下校するくらいで、ほとんど約束だけ、みたいなところがあったけれど。

 それさえ、部活仲間や知り合いが近くにいたら、偶然いっしょになったんだって、一生懸命アピールして。

 お互いに気恥ずかしさをやり過ごして。

 本当に、初々しかったのに。

 高校生になった陸は、歩きながら、無造作にわたしの髪に触ってくるのだ。

「お嬢さま、じゃん。サッラサラ。どうしたらこんなになんの?」

 そりゃあ、まあ、一度も染めたことのない黒髪セミロングストレート、ですけども。

 それは親が厳しいからであって。校則違反なんて考えたことがない。

 でも、それくらいでお嬢さまって言われても困る。