奈落と純愛


 話もすぐ、大きくする。わたしのどこが、お嬢さまなんだ、バカ。一般家庭に育った平凡な女子高生だっていうの。

 高校生になってからは同じクラスになったことがないけれど。

 クラスメイトだった中2、中3の頃は、陸のかきまぜのせいで、何度も授業が中断されるのを見てきた。

 こんな猿の相手をしなきゃならなかった先生がたには同情する。

 でも、彼氏だからかばうってわけじゃないけど。

 陸のつっこみのおかげで、授業にドッと笑いが起きたりだとか。

 そのおかげで、寝ていた子が起きたりだとか。

 先生から、雑談みたいだけど、授業に関連する面白い話が聞けたりだとか。

 クラスの雰囲気だって、テストの平均点だって、いい方だった。

 悪いことばっかりじゃなかったと思うんだ。うるさかったけど。

 わたしはいつも、暴走する陸に、低めのテンションでストップをかける役目。

 はい、五十嵐くん、そのへんで。先生困ってるから。ていうか、テスト近いから。

 問題児と、クラス委員。猿と調教師、なんて言う、クラスメイトもいたっけ。

 付き合ってることは、ないしょだったから。