奈落と純愛


 コンビニの外に出てから、ほっとレモンを渡すと、陸はやさしーじゃん、と言って、空いた片手で、わたしの髪をわしゃわしゃ混ぜた。

「確かにさみーな。いつもんとこじゃ風邪ひくかも。どうする? マックでも行ってだべる? ……それとも、香緒里の家とか?」

 にやっ、と笑う陸。

 そうできないことをわかっていて、意地悪だ。

「うちの父、泣いちゃうよ」

「彼氏がいること、言ってねーもんな。こう見えて、お嬢さま」

「殴るよ」

「……殴ってから言うな……」

 腰にグーを入れて忠告すると、陸がおおげさにうめきながら言う。

 なんでもオーバーリアクションなのだ。ついでに、声も大きい。