私は最後の力を振り絞って

雅樹を突き放した。


「....。なんで、あんたが泣いてるのよ。」



「くっそ。なんで怒らないんだよ。

最低って叫べよ。殴れよ。」


私だってそうしたかった。そうする気だった。


でも出来ないじゃん。そんな姿見たら。



「突き飛ばしてごめん。

雅樹。ホテル行こう。」



私がそう言って、倒れる雅樹に手を伸ばした。


「はっ?何言ってんの?

今、自分がなにされたか分かってんのか?」


「うん、知ってる。

お互い。替わりにしよ。慰め合うんでしょ?」


そうやって私は初めてを捧げた。


好きでもない人に。


好きな人を思い浮かべながら抱かれた。