生まれた時から、俺だけを見つめてくれる人がいる

週に数回行っているプレスクールのどの母親よりも、若い先生より、ビーチで顔なじみになったサーファーのお姉さん達よりいい女

それが俺を産んだ母親 姫花だ

ほとんどの友達が父親と母親と暮らしているけど、俺みたいに母親しかいない奴もいるし、父親しかいないヤツもいる

でっかい男の人に肩車してもらってる友達を見かけると少し羨ましくもなるけど、でも、べつにいい

俺には姫花がいるから

近所で雑貨屋をやっていて、俺のサーフィンの師匠でもあるダンは

“女は強がるけど、男より弱い生き物だから、守ってやらなくちゃいけないよ? それでなきゃ、男に生まれてきた意味がない”

って教えてくれた


「レン、私と一緒にブランコしよ?」

「レン、今日おうちに遊びに行っても良い?」

「レン、今度のお休みに私のおうちに遊びに来て?」

今日もレンは、プレスクールでたくさんのお友達に囲まれていた

みんな口々にレンに話しかけてくるが、レンは上の空

「ちょっと! レン! 聞いてる?」

かんしゃく持ちのお友達の大きな声で我に返るレン

「え? あぁ ごめん みんな何だっけ?」

レンのその言葉にお友達は呆れ顔

それでも、もう一度言おうとしたとき

「レン~ ママよ~」

先生がお迎えが来たことを知らせた