「はい、姫花、召し上がれ!」

とケンは姫花が注文する前に、自家製ベーグルのサンドイッチとコーヒーのカップを持ってきた

母乳で育てていたため、最初のうちはカフェインを気にしていた姫花だったが、ケンに

「ドラム缶で飲むわけでもないし、一日一杯のコーヒーくらいいいんじゃない?」

と言われ、それ以来、毎朝、ケンの淹れる絶品コーヒーを楽しみにしているのだ

マーサに抱かれたレンは、これまたマーサ特製の離乳食を食べさせてもらっている

知り合いのいない異国の地での子育ては、最初こそ孤独だったが、少しずつ新しい環境に慣れ、人と関わっていき、自分のこの街の住人になる事ができた姫花とレンだった

自分の子どもは無条件にかわいいものだが、やっぱり四六時中顔を突き合わせているとストレスも溜まる

ケンとマーサ夫婦にも子どもはいたが、ハイスクールに通っている多感なお年頃の兄妹で、手を焼いているらしい

まだ孫には早いふたりだったが、やっぱり、姫花と潤也の遺伝子は受け継がれているようで・・・マーサはレンにメロメロ・・

「レンは、パパ似なの?」

姫花がシングルマザーなので、父親である潤也を見たことがないマーサが遠慮なしに聞いてくる

「そうね~ 私には似てないわよね・・」

と苦笑いの姫花

「ってことは、レンのパパは相当色男なのね~」

とマーサはレンの口をタオルで拭きながら言った

「こんなこと、聞いちゃあマズイのかもしれないけど、その父親ってのは今何してるんだ?」

とケンは姫花を見た後、心配そうにレンを見て、そのまま抱っこしたのだった