「思い出には勝てないわよ?」

「わかってる・・・」

「でも、思い出だけじゃあ、私は満足しない」

「・・・・・・」

「過去は、私を幸せには出来ない」

遠くを見つめて話す姫花の視界がさえぎられた

潤也の切ない瞳が姫花の瞳に映り、唇が重なった

「フフッ」思わず笑ってしまう姫花

「なんだよ?」

照れ隠しの潤也

「潤也のキスは、私を満足させてくれる」

「・・・・・・」

「幸せにしてくれる・・・」

二人の間に流れる軟らかい空気・・・

「コホン!」そこに似つかわしくないわざとらしい咳

「もうそろそろ下に移動してくれよ? 周りの客がさぁ・・・」

とジェイソンは店内を見渡した

賢次と潤也が現れた事だけでも、騒然としだした店内なのに、そこにこのキス

かなりの騒々しさだった

「そうね・・日向とのデートも邪魔されちゃったし・・」

と姫花は席を立った

そんな姫花に首を振り、潤也も席を立ち、ふたりは皆の待つ地下へ行った

街がイルミネーションに彩られる時期になると、姫花は毎年こうやって日向を思い出すのだ

潤也に不満があるわけではない

ただ、日向を思い出すのだった