Afther 姫☆組 (姫シリーズVol.4) 【完】

賢次が去った後のAQUAには、重い空気が流れていた

高校を卒業し、同じ業界にいながらも、それぞれ自分の思う先に向かって進んでいた

目標があるから

成し遂げたい事があるから

その為の努力は惜しまなかった

それは、みんな一緒だったから顔を会わさなくても、直接声を聞かなくても、ふと入ってくる仲間の活躍に刺激され、さらにやる気が出てきた

そして、発行部数や観客動員数という数字によって目に見える成果に自信をつけてきた

それは姫花も同じだと思っていたから、便りがないのは元気な証拠だと思っていたから、“もう、日本にはいない”と言い切った賢次の言葉がとてつもなく重かったし、衝撃的だった

誰も何も言わない中、ガクは、無言のまま立ち上がった

「待って・・ 私も行く」

りんがガクのシャツを掴む

「・・とりあえずは俺が見てくる また連絡するから」

とガクは、りんの手をそっと解いた

そして、大吾に視線を向け

「悪いけど、コイツ送ってって」

とだけ言い、三人に背を向け、AQUAを後にした

有無を言わせないガクの表情を見たのは久しぶりだった

ガクの背中を見ながらりんは複雑な心境だった

姫花の両親は、ほとんど家にはいない

10年以上姫花と親友をやっていて、まだ直接会ったことはなかった

だから、あの兄妹は支えあって生きてきた分、兄妹のつながりが強い

その兄妹の間に入ってしまったのは、自分だから、自分がいたから、あんなに妹想いだったガクと姫花の家族としての時間を奪ってしまったのかと・・

りんの心はさらに、重くなっていったのだった