「さてと」


簡単に、けれど大量の朝食を終えたあと、彼は家中のごみをまとめ始めた。


(確か今日回収にくるって言ってたよな)


ごみ置き場は一階の隅っこのスペースにある。

前回の回収から二日しか経っておらず、ごみの量は少ない。

彼は軽々と袋を持ち上げると、玄関で靴に履き替える。


「今日も暑いんだろうなー…」


暑いのが苦手な彼は、ため息をつくと扉の取っ手に手をかける。

押すと、真新しい扉は、静かに開いた。


(まぶし………)


夏だ。

室内から一歩外へ出ると、嫌でも全身でそう感じさせられる。


「………、え」


ふと、細めかけられた瞳が、再びひらかれる。

ドサッと音を立てて、ゴミ袋が手から落ちた。


(え、は…………え?!?!)


目の前の一点を見つめた彼の瞳が、これ以上ないくらいに見開かれる。

一歩後ずさって、彼は叫んだ。


「うわあっ?!?」


彼、鈴村千秋(すずむらちあき)の視線の先には、女の子が横たわっていたのだ。


(なに?なんだ?…死んでんのか?!?)


ドッドッ、と心臓が早鐘を打つ。

嫌な汗が全身から吹き出す。

朝起きてゴミを捨てに行こうとドアを開けたら、女の子が倒れてました。だなんて、洒落にならない。

ドッキリにしてはタチが悪すぎだ。


「……ん、」

「え……」


混乱でまとまらない思考が、ハタと途絶える。

倒れている彼女が吐息のような声をもらしたかと思えば、ふるりと睫毛が震えて、静かにまぶたが開いていった。