"待って‼︎" の一言が言えたら、良いのに……。
そんな一言も口からは出ずに、私はその場に立ち尽くした。
いつだってそうだ。
私はそのまま 教室の隅に座り込んだ。
私は臆病者だ。
そして、偽善者だ。
でも……だって……、初めて出逢った時からの "好き" の想いは消せない。
彼のことを想い初めて、もう13年。
まだ高校1年性、16歳の私からしたら すごく長い年月。
だって、今も好きなんだもん。
もう彼は 私の手に届かないところにまで歩いて行ってしまったけれど。
完全下校の10分前の鐘の音。
私は急いで帰る支度をした。
そして、ゆっくりと 自分のペースで歩いて 下駄箱へ。
「遅い。」
そこには、彼がいた。
「……何で、ここに居るの⁇」
もうとっくに帰っていると思っていたのに……どうして⁇
「お前が心配だから、だろ。
お前 日誌書いて 黒板 消すごときに時間かけ過ぎだろ。」
「……あははは。」
乾いている、完全な作り笑い。
「作り笑いとか、すんなよ。
俺はお前の笑顔が好きなんだから。」
未夜の声が心に刺さり、涙が出る。
「……ありがとう。」
「……ガラにもないこと、言ったな。
そんな……泣くほど 気持ち悪かったか⁇」
私の顔を見て、驚く未夜。
私は首を横に振った。
「違う、嬉しいの。」
さっきとは 打って変わって、心の奥底から 私は笑顔になった。



