セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜


 私は、難波の事が好きなのか。

 私は、難波とどうなりたいのか。

 私にとって、難波はどういう存在なのか。

 ずっと、ずっと、ただひたすらに考えた。考えて、考えて、考え続けて、私は、やっと難波の姿を見つけた。


「難波……‼︎」


 人気のない廊下の一番隅っこ。その窓からタバコをふかしていたその後ろ姿を見つけて声を上げた。

 振り向いたその顔は、私の姿を捉えるなり少しだけ複雑に笑った。


「来ると思ったわ」

 そう言った難波は、吸っていたタバコを携帯灰皿の中に突っ込んだ。

 ゆっくり、ゆっくり、難波の元へと近づいていく。私は、その足の動きに合わせてゆっくり、丁寧に呼吸をした。

「噂、聞いて来たんやろ」

 慰めてくれるんか、と難波が笑う。その笑顔は、意外にも清々しいものだった。

「……慰めに来たというか、難波の新しい道を提案しに来たというか。何というか」

 正直、私の頭の中も整理はついていない。だけど、私の中にはひとつの道が切り開かれていた。


〝結婚に何が大事かって、結局のところは、安心とか安定とか、それこそ、この間言ったみたいに、自分の弱さが見せられるだとか。そういうところに知らず知らずの間にある愛が大事なんだよ。〟


 秋加の言っていた、この言葉。これを思い出して、私は、この道を選ぶしかない。それしかないと、そう思った。