しかし、そんな後悔も先に立たず、数日後。私は嫌な噂を耳にしてしまった。
「難波と松井って付き合ってたらしいけど、昨日別れたんやって」
「松井ちゃん、難波さんと別れたらしいで」
「最近少し一緒にいるとこ見かけてて仲よさそうやったけど、やっぱりバツイチはあかんのかね」
行き交うところで聞こえてくる、こんな噂たち。私は、そんな嫌な噂話に耳を伏せながら歩いた。
オフィスに入ると、私の隣の席には松井ちゃんが既に腰をかけていた。
ごくり、と一度唾を飲み、私は松井ちゃんの席へと歩き始めた。
「松井ちゃん」
「……あっ、安井さん」
少しだけ、松井ちゃんが気まずそうな表情をした。多分、そこら中で飛び交う噂話が私の耳にも入っていると予測してのことだろう。
「話、あるんだけど……良い?」
私がそう聞くと、松井ちゃんは「はい。私も言いたいことあったので」と承諾してくれた。
松井ちゃんの言いたいことというのは気になったけれど、私はひとまず松井ちゃんと一緒に人気のない非常階段まで移動した。
「噂、聞いたんですか」
非常階段に出て、最初に口を開いたのは意外にも松井ちゃんだった。どうしようかと私がぐずぐずしている間に松井ちゃんの方から言ったのだ。

