セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜


「……私ね、不倫してたの」

「え?」

「結婚してる人を好きになっちゃってね。ここ半年くらい隠れて会ってたんだけど、その関係が今日、ついにダメになっちゃった」

 今にも涙が零れ落ちてきそうな瞳。そんな瞳を揺らしながら秋加の言った言葉は、私にとっては少し信じ難いことだった。

「すごく私のことを好きだって言ってくれてね。だけど、言葉だけで中々奥さんとは別れてはくれなかった。このままでもいいやって自分に言い聞かせた矢先に、奥さんに私の存在がバレちゃったんだけど、彼が選んだのは奥さんの方。もう、私とは会えないって言われた」

 不倫なんて、ドラマの中だけの話だと思ってた。あるとしても、私の身近でそんな事が起きているなんて思いもしなかった。

 結婚している人を好きになる。結婚をしているのに、他の人を好きになる。それは、一体、どれだけの壁が目の前にあって、どれだけ自分の心は苦しむのだろう。

「最後の最後にも、私に好きだって言ってくれた。奥さんを選んだくせに、残酷な人だよね。でも、そんな残酷な人を好きになったのは私か。彼さ、私の事が好きでも奥さんとは絶対に離れられないって言ったの。私に恋をしていても、愛は奥さんの元にしかないって。結局、恋のトキメキだけじゃあ、そこにある愛には遠く及ばないっていうことなんだなって思った」