「彼氏じゃないですよ」

 他の人と同じように、私と難波が付き合っていると思っていたらしいおじちゃん。あまりに同じような勘違いをしていた人が多くて、私は、くすりと笑っておじちゃんに答えた。

「なんや、彼氏やなかったんか。毎度仲良うええ雰囲気で話してたから付き合うとるんかと思ったわ」

「そうですか? でも、ほんまにただの友達なんです。それより、今日その女の子と来ててどんな雰囲気でした?」

 難波は、松井ちゃんとうまくやれていたのだろうか。何となく、そんな事を考えながら聞いた。

「ああ、ええ雰囲気で話しとったなあ。あっちがあのイケメンくんの彼女なんか?」

 にこにこ、と笑いながら答えてくれたおじちゃんの言葉に、私は何となく寂しさを感じた。


「……そうなんや。うまくやってたんや。そっか、そっか」


 難波がこの間言っていたとおり、彼は子供じゃない。離婚してしまったとはいえ、ちゃんと、一度は一人の女性と人生を見据えて向き合い、形にした人だ。29年間生きてきて、たったの一度も結婚という話にまで有り付けなかった私とは違うんだ。

 実際のところ、難波は優しいし、気も聞くし、一緒にいて落ち着くし、どういった言葉で表せばいいのか分からない程にいい奴だ。

 松井ちゃんだって、難波の事を気にしていたんだし、上手くいかないわけがない。そりゃあ、上手くやっていたに決まってるか。