ガラガラッ。

 早川くんとのご飯を終えて別れた後、私は見慣れた居酒屋の引き戸を開けた。

 難波と私の行きつけの居酒屋。今日、ここで松井ちゃんと難波は飲んでいる。難波、まだいるかな。なんて、そんなことを思いながら扉を開いたけれど、難波と松井ちゃんの姿はそこになかった。


「いらっしゃい」

 この居酒屋の制服なのか、いつもと同じ黒いTシャツを着ているおじちゃんが私を見て言った。

 私はぺこりと頭を軽く下げると、そのおじちゃんが立つ目の前にあるカウンターへと腰を下ろした。

「生ひとつ」

「あいよ」

 正直、飲み足りなかった。可愛い子ぶってカクテルなんて頼んだからなのか、それとも、少し前から胸の奥にできてとれないモヤモヤのせいなのか。

 私は、すぐに手渡された生ビールのジョッキを持ち、喉の奥にそれを豪快に流し込んだ。

「はあっ」

 ジョッキをテーブルに置き、大きく息を吐く。すると、目の前で焼き鳥を焼いているおじちゃんが口を開いた。

「姉ちゃん、彼氏さんと別れたんか?」

「え?」

 一瞬、何のことかと思った。しかし、「今日、他の女の子と来てたで」と言われ、何のことを言っているのか理解ができた。