セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜


「なんやねん。寂しいんか?」

「はあ? なに言うてんの!そんなん、絶対にありえへんから!」

 冗談っぽく私をからかった難波の言葉を私は全力で否定した。少しだけ複雑な感情を生んだ私の胸にも言い聞かせるように言い放ち、手元にあったコーヒーカップを口元へ運んだ。

 ごく、ごく、と残りのコーヒーを勢いよく飲み干すと、目の前の難波が口を開いた。

「そんな否定せんでもええやろ。って、そんな事より、どうやねん。周りのリアクションは」

「え、あー、うん。ひとまず男性陣には好評かな」

「せやろ? 俺もちらっと話し聞いたわ。他の部署のやつらも安井が可愛なっとる言うとったわ」

 大成功やな、と言って難波が笑った。今の難波の言葉も嬉しかったけれど、難波が嬉しそうにしてくれているのが一番嬉しかった。

 いつも、難波がこうして私のために何かをしてくれたり、考えてくれたりすることが単純に幸せだった。

「なあ、難波。大成功ってことは、もう、これで安売り作戦は終わりってことやんな?」

 私は、そう恐る恐る聞いてみた。すると、ギロリと難波の目が私を睨み付ける。

「え? ま、まだあんの?」

「あったり前やろ、ど阿呆!お前、結婚したいねんやろ? せやったら、まだ一番大事なもんあるやろ。お前の中で致命的に欠けてる、結婚する為に必要なもん」