難波は、やっぱり前の奥さんのことを引きずっているのかもしれない。
そんな難波の事だ。きっと、今回の松井ちゃんのことも……そう思っていたその時、難波の口からは意外すぎる答えが出てきた。
「ええよ。別に。ほんで、その子ってこの会社の子なん?」
「えっ?」
一瞬、聞き間違いかと思った。
難波が引き受けてくれるなんて、正直、かなり低い確率でしかないだろうと思っていた。それなのに、難波は今、ご飯に行くことを〝ええよ〟と言った。
「ほ、ほんまに? 難波、絶対嫌やとかダメやって言うと思った」
「なんで?」
「え、だって、今までそういうなん断ってたやん。ひょっとして、まだ奥さんのこと引きずってるんかなあって思ってたんやけど……」
「はは、まさか。あいつの事はもうとっくに吹っ切れてるし、引きずってない。そもそも、俺は引きずれる立場ちゃうねん」
「そうなんや……」
すごく久しぶりに難波の口から離婚の話を聞いた気がする。ふざけて軽く口にすることはあったけれど、こんな風にちゃんと話してくれたのはいつぶりだろうか。
「まぁ、確かに離婚してから他の女の子からの誘いとかは全面的に断っとったけど……そろそろ頑張らなあかんかな、思うてな。安井も頑張っとることやし」
「うん。そっかそっか」
意外すぎた難波の一言に、私は未だ驚いていた。そして、少しだけ複雑な感情を胸の奥に覚えた。

