「えー? 言っちゃおうかなぁ。どうしよっかなぁ」
「なんやねん。そこまで言うたなら言え。アホが」
「なんなんよ、アホて!酷い!」
私は、その〝ええ話〟というのを話すことをわざとらしく勿体振った。
いつも私に意地悪をする難波に仕返しをしたくて、何となくそうしてみた。しかし、私は、難波が松井ちゃんの話を快く引き受けるような気もしなかった。
難波のことだから、そんなんええわ、とか、余計なお世話や、とか言いそうな気がする。
勿体ぶったはいいが、難波が良いリアクションをしてくれるとはまるで思わなかった私は、口を開き、さっさと伝えてしまうことにした。
「難波のこと、ええなあ思うてくれてる子がおるんよ。その子と、一緒にご飯行かへん? って話やねんけど……」
「あー、そういう事か」
呟くように言った難波が、ジュースの入った紙コップを口へと運んだ。
松井ちゃんのお願いを引き受けておきながら、私は、やっぱりそうだよなぁ、と思った。
難波は、離婚してからたったの一度も女の子に言い寄られなかった訳ではない。一度だけ、私のこの目でも難波が女の子にご飯を誘われているところを見た事もある。だけど、難波はそれを断っていた。

