セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜


 一久さんが、腰につけているシザーケースからハサミを取り出した。

 既に覚悟を決めていた私は、一久さんが私の髪にハサミを入れていくのをちゃんと見た。ざく、ざく、と切られていく私の長い髪は、たくさんの束になって足元に落ちた。

 そんな様子をずっと見続けていると、気がつけば私の髪は、肩にギリギリかからないくらいのボブヘアになっていた。


「完成」


 一久さんが丁寧にブローしてくれた私の髪は、綺麗な内巻きのボブヘアになっている。真っ暗だった髪も、柔らかなブラウンになっていた。

「……なんか、今までと全然ちゃう」

 髪を変えた。ただそれだけで、今までの雰囲気とは全く違う私になっていた。

 少なくとも前よりは遥かに柔らかくなったような気がする雰囲気に、人はこんなに変われるものなのかと私は思った。

「これから、メイクもするからもっと可愛くなるよ。メイクし終わった頃には郁人も戻ってくると思う」

 こっち来て、と言って歩き出す一久さん。私は、そんな一久さんの後ろをついて歩いた。

 美容室の休憩室であろう小さな部屋。そこに誘導された私は、中にいた綺麗な女性にぺこりと頭を下げた。


「あ、あなたが明菜ちゃんね」

「え、あ、はい。安井明菜です」


 部屋の中にいた金髪の綺麗な女性が私の方へと寄ってくる。そして、私の手を取ると、私を部屋の中にある椅子へと座らせた。