セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜


「そうですか……」

 私も知らない難波の離婚の理由。それを、一久さんは知っているのか。そう思うと少しだけ寂しい気もしたし、聞きたくて仕方がなくもなった。だけど、こればかりは聞けない。聞くのなら、難波に直接聞かなければ。

「ま、そんな事より。安井ちゃん、どうする? 髪型」

「あ、ええっと……どうしましょう」

「郁人の注文通りで良ければ、そうしたいところなんだけど……どう?」

 私は、ごくりと息を呑んだ。

 難波が注文してくれたような髪にするのなら、この髪を30センチは着ることになる。これは、ずっと黒のロングヘアだった私にはとても勇気がいる決断だった。しかし。


「そ、それで……お願いします」


 私は首を縦に振り、難波が注文したブラウンのボブヘアにしてもらうよう一久さんにお願いした。

 一久さんは笑顔で「任せて」と言うと、私の髪を染める薬剤を作り始めた。髪に薬剤を塗り、シャンプー台で流す。そして、再び元の席に戻ると、ついに髪を切る瞬間がやってきた。


「大丈夫。俺、上手いから。郁人は見る目あるし、絶対可愛くなるよ」


 少し緊張していた私。そんな私に気づいた一久さんは鏡ごしに私へ笑いかけた。私もなんとなく笑い返し、覚悟を決めた。