そんな、お洒落なプライベートの難波の隣を歩き続けること約10分。私と難波は、梅田の街中にある美容室の前にいた。

「ここ、最近オープンしたとこやんな?」

「ああ、そうらしいなあ。ここに俺の友達おんねんけど、今日はそいつらにお前を結婚したいと思わせる女子に変えてもらおう思ってんねん」

「え、まさか、髪切るん?」

「切りたなかったら切らんでもええけど、ただ、今日だけでもメイクは変えてもらう。気に入らんかったら元に戻してええから」

「メイクもするんや」

「ん。まあ、腕は確かやし心配せんでも大丈夫やで。俺も、お前のこと中途半端に考えてる訳ちゃうし、なんか気に食わんかったら言うたるで遠慮すんなよ」

 行くで、と言って美容室のドアを開けた難波。私は、そんな難波の後ろでこくこくと二度頷き、変な緊張感に包まれたままで中へと足を踏み入れた。

「おお、やっと来たか」

 中に入ると、如何にも美容師という感じのイケてるお兄さんが難波を見てそう言った。

「こいつ、深夜ドラマ見て寝坊しよんねん」

「な、ちょっと!理由まで言わなくてもいいでしょう!」

 恐らく、さっき言っていたお友達であろうお兄さんにそう返した難波は、笑いながら私が遅刻した理由を口にした。そんな彼の肩を私は一度強く叩いたけれど、彼はびくともせずに笑っていた。