「な、えっ⁉︎ ちょっと、松井ちゃん、私、そんなん初耳やねんけど」

 驚いた私は、一度パソコンと向き合った体を、また松井ちゃんの方へと向けた。

「だって、顔、かっこいいじゃないですか」

「え、あー、ああ。そうなんかなあ?」

 私と難波がこの会社に入った当初、難波は間違いなくこの会社で人気のある男子だった。私も、難波のことが好きだと言う女子から何度か相談を受けた事があったし、難波から話を聞いたりもしていた。

 少しだけ浅黒くて、パーマのかかっているかのような癖毛の黒髪。それから、子犬みたいな可愛らしい顔立ちと、目元にある少しセクシーなホクロが特徴的だ。しかし、そんな可愛らしい外見に反して高い背丈に、若干筋肉質な身体。それが私以外の女子には受けているらしい。

 離婚をしてしまったことや、年を重ねたこと、それから、他のイケメン男子が入ってきたことで人気が落ちつつあるのかと思っていたけれど……まだいたのか。難波派女子。

「安井先輩、私と難波さんの仲、取り持ってくださいよぉ」

 松井ちゃんが私の手を握り、上目遣いをした。少し悩んだけれど、悪くない話かもしれない。

「まあ、そうやね。私も難波には幸せになってほしいし、松井ちゃんもええ子やし……悪くないかも。その話。うん。いいよ。私、協力する」