「安井さん、安井さん!」

「なに? どうしたん、松井ちゃん」

 パソコンと向き合い、いつものように仕事を進めていると、背後から松井ちゃんの慌ただしい声がして振り向いた。声の主は、やはり松井ちゃんだ。

「今日、なんかありましたか⁉︎」

「え、なんで?」

「いつも、誰よりも先に給湯室の紙コップの補充、安井さんがしてくれてて終わってるはずやのに今日は終わってなかったです!しかも、今日、安井さん駐車場点検当たってます!あの、これは、敢えてやってないんですか?」

 心配そうな表情をして、松井ちゃんが私の顔を覗き込む。

 毎週、水曜日に給湯室の紙コップやコーヒー豆などの補充を行う。それは、私たち事務の仕事。いつもなら、朝来た時点で既に私が済ませているのだけれど、今日はそれが終わっていなかったようだ。

 それから、駐車場点検。これも毎週水曜日に行う事務の仕事。3人いる事務の皆で毎週順に行っている。

「あー、忘れてた。ごめん。駐車場点検今から行ってくる」

 いつもなら、誰かに気づかれるより先に終わらせてしまっている仕事たち。どうしてそれが終わっていないのかというと、実は、それにはちゃんとした理由がある。