「こんなん言いたないけど、正直、お前はモテる。スタイルもええし、仕事出来るし、顔も整っとるし、容姿や人間性に関して言えば全く問題はない」

「ええー? 何よ、もう。急に、そんな褒めんといて……」

「でもな、安井。お前のなあ、そこがあかんねん。安売りできる要素がない。お前のそういうところが、この年齢になるまで負け組に属している理由や」

「え、なに、褒めてたんちゃうんや」

 すごく気持ちの良い、天に昇ったかのような気持ちだったはずなのに、気がつけば私はどん底にいた。例えるなら、高低差の激しすぎるジェットコースターのような感じ。そんな勢いで私は難波に突き落とされた。

「しかも、お前、男と付き合うと演じる癖あるよな?」

「え……演じるって?」

「とぼけんな。この前、お前が元彼とデートしてた時にばったり会ったやろ。俺、あん時確信したわ。あんなん、本来のお前ちゃうやろ。お前は、男に合わせる癖があんねん。嫌われんとこう思うて頑張っとるんかも分からんけど、聞き分けのいい彼女演じてたかて結婚なんかできへんで。寧ろ、結婚から遠のいてることに気づけ。ど阿呆」

 胸に、いろんな意味で矢が刺さった。

 難波の言う通り、私には、相手に合わせる癖があった。相手に嫌われないように。次こそ、結婚できるように。そう思いながら過ごしていくうちに、私は、本当の自分を隠したままで付き合うということが当たり前になってしまっていた。