この世の中で生きていると大体のものが〝勝ち組〟と〝負け組〟という名の二つのグループに分類される。勝負事や運、時には人生そのものでさえ勝ち組と負け組の二種類に振り分けられてしまうこの世界で、私は間違いなく負け組に属していた。

 女にとっての人生のゴール。それは、結婚をする事だと私は思っている。その人生のゴールテープを切れる女と、切れない女。そこで女は勝ち組と負け組に振り分けられるのだ。

 私は、間違いなく後者。ゴールテープを切れない負け組に属する女。それは、単なる思い込みや予測ではなく、確実にそうだという事を私は今、改めて痛感しているところだった。


「ほんま、お前、このままやと負けっぱなしで人生終わるな」

「あんなあ、難波。これ、笑いごとちゃうんやけど。真剣な話」


 とある会社のリフレッシュルームと呼ばれる休憩室の椅子に腰掛け、口角を上げて笑っている男、難波郁人(ナンバイクト)と、そんな男に注意をする女が私、安井明菜(ヤスイアキナ)。

 私は、まだ笑っている難波を睨みつけるようにしながら、リフレッシュルーム内に三台も備え付けられている自動販売機で購入したブラックコーヒーを口に運び、再びテーブルの上に戻した。