ユウには天瀬のことを『嫌でも目に入る』そんな存在として答えていた。

 その『嫌でも目に入る』という意図を、本来の意味とは違う方向へミスリードした事実は否定しない。


 ……が。

 その事実を他人に伝える気は更々ない。


 確かに、天瀬のことは『嫌でも目に入る』。

 でも、それは俺にない美徳に惹かれているから。

 馬鹿正直なほどに、真面目な天瀬に惹かれているから。


 その単純だけど、奥深くも感じるその思いを、ひとことで語ろうとするほうが、むしろ難しいのではないだろうか。


 そんなことを思いつつ、にこやかな表情をしてオムライス定食を平らげたユウにひとこと伝える。



「長居することもないだろう。行くぞ」

「え? 行くもなにも、コウまだ食べきってないだろ!?」

「……気にするな」

「するよ! 食わないなら、俺が食う!!」

「は?」



 そう言って、本当にユウは俺のうどんをかっさらい、残りをおいしそうに食べていた。

 俺の言ったとおり、のびたうどんも、また乙だ、と言いながら。