天瀬が気になって、手につかない。
そう案に伝えてくるユウに返す言葉はひとつしかないだろう。
「気になるも何も、嫌でも目に入る訳だし」
「まあ。確かにそりゃあ、そうだな。出席番号でも前後の席。成績順でも前後の順位」
「だから、気になるも何も、嫌でも目に入る。それ以上でも、それ以下でもないんだよ」
「ふーん……」
そう言って、ユウは納得できていないような微妙な返事を返しつつ、オムライスを口いっぱいに頬ばっていく。
その姿はさながら可愛い子リスのよう……? んな訳あるかっ!
むしろ、ガッツきすぎの男子校生そのものというか、何というか。
「まぁいいや、コウ」
「?」
「うどん、のびるぞ?」
にやり、不敵な笑みをこぼし、そう伝えてくるユウの瞳は楽しげで、何だかそれだけで癪にさわる。
だけど、言い返すことこそ、相手の手中にはまっている最大の意思表示だということも理解しているからこそ、俺は言葉をまる呑みする。
「のびたうどんも、また乙だろ」
「ったく、相変わらずだね。コウは」
そう言いながら、ユウはデザートのフルーツへ手を伸ばしていた。
