オレンジ色の光が差し込むこの教室で、
物音を立てているのは私と黒板の上の時計だけ。


私は白色のチョークを手に取り、掃除したての黒板に本当は書いてはいけない気持ちを綴る。


改めて書く事によって自分の想いを痛感させられる。

ダメだとはわかってはいる。
でも、だけど。と、そんな接続詞が頭のどこかに浮かんできてしまうのはやっぱり期待しているところがあるからか。

そんな自分に嘲笑じみた苦笑が溢れる。


なんでなんだろう。

消さなくてはいけない、それなのに黒板消しを持ったままの私の腕は動いてくれない。


そんな時、最終下刻時間を告げるチャイムが鳴った。


「…消さなきゃ。」

ぽつり呟く言葉は目の前の真っ暗な黒板に吸い込まれて反響することはなかった。


残ってしまったチョーク跡を擦るように急いで消した。




私は、消してしまったことからの胸の痛みの正体を知っている。