エレベーターに乗って智也は最上階のボタンを押した。


まだ私の手を握っている。


智也は酔ってはいるが理性は保っているように見えた。


「いきなり抱きついてごめんね。


 スマホ持ってキョロキョロしてる女の子見てすぐわかった。


 急いで来てくれたんだと思ったら嬉しくてつい・・」


と思い出し笑いするように智也は言った。


「あ、あの、私こんな普通の女ですけど・・」


と私はシドロモドロ言った。


「うん、顔は普通だけど挙動が可愛い」


と智也は目をほこぼらせて言った。



(顔は普通!挙動が可愛いって)


私はふてくされた顔をした。


そうして最上階のバーに着いた。


ウェイターは智也の事を知っていた。


たぶん抜け出して私を迎えに行ってくると言っておいたのだろう。


輝く夜景を眺めながら私達は乾杯した。


私はカシスオレンジを飲みながら


「何があったんですか?」


と聞いた。


智也はマルガリータをくいと飲み干して


「6歳の女の子が死んだ」


と言った。


「智也・・智也のせいじゃないよ」


と私は智也の肩に触った。


「わかってる・・」


と答えたがちっともわかっていなかった。


自分を責めている。


「ねえ、智也。私に出来る事ならなんでもする。


 部屋に入って汗を流して飲み明かそうよ」


と私は言った。


「そばにいてくれるの?」


と智也は俯いて言った。


「うん。私はラインの恋人だからね」


と私は頷いた。