呼び出し音が鳴って「もしもし」と智也の声が聞こえた。


「理央よ。今待ち合わせの場所にたってるんだけど」


「理央ちゃん」


と背後で声がした。


私はスマホを耳に当てたまま向きを変えるといきなり抱きしめられた。


「な、なに??」


私の顔は男の胸に押し付けられていた。


「本当に来てくれたんだね、ありがとう」


となおも私を強く抱きしめる。


私は男の背中をドンドン叩いた。


「ああ、ごめん。つい嬉しくて」


と男はやっと体を離してくれた。


私は男の顔を見上げた。


男も私を見下ろしている。


「智也・・?」


と私は呆然と男を見た。


乱れた黒髪、二重のきりっとした目、通った鼻筋。


これってイケメンと言われる部類の男では・・?


「理央、すぐにわかったよ」


と言ってまた私を抱きしめた。


お酒臭い、酔ってる。


「と、智也。離して」


とまた智也の背中をドンドン叩いた。


「ああ、ごめん」


と言って体を離し私の手を掴んで歩き出した。


「智也、どこ行くの?」


私は手を引かれながら聞いた。


「あのホテルに部屋を取ってあるんだ」


と高くそびえ立つシティーホテルを見た。


「いきなりホテル?」


と驚く私に


「大丈夫、一緒にお酒飲むだけだから」


とスタスタ歩いて行く。


あああ・・


私は逆らえず付いて行ってしまった。