「沙希はね、感情表現が乏しいんだよ」

涼子が横からそう言うと、
「そうか?」
と、諏訪くんが意外な顔をした。

この2週間で変わったことといえば、このふたりとわりと仲よくなったことだ。休み時間、廊下ですれちがったりすると、たあいのない立ち話をすることが増えた。



「沙希さー」
「んー?」

諏訪くんと是枝くんがいなくなり、また英単語覚えを再開した私は、涼子にテキトーに返す。

「諏訪くんといい感じ」
「なにそれ」

ふ、と鼻で笑う。

「なんか、合ってる。沙希には、ああいう気さくで話しやすくて女にうとそうで単純そうな同級生のほうが、いいと思う」
「それ、諏訪くんに言ったら殴られるよ」

涼子が比べているのが誰なのかはあきらかだったけど、私は口に出さなかった。
友情から始まる恋がどうのこうの、と続けて熱弁している涼子の横で、私はまた英単語帳に視線を戻した。