「さくら、起きなさい」
次の日の朝、優しく体を揺すられた。
いつもとは違う起こし方に、私は薄っすら片目を開けた。
霞んで見えた人影は、髪が長かった。
「・・お母さん・・」
髪をサイドで束ねている、お母さんだった。
「・・お兄ちゃんは?」
私は不安になった。
いつも起こしに来てくれるお兄ちゃんが、今日は起こしにきてくれない・・。
昨日の事が原因かもしれないと、私は焦った。
「拓真なら、もう出かけたわよ?」
「え・・?」
「今日は日直当番だから、早く行くって言ってたわ」
・・何それ。
今まで日直当番だからって、早く家を出たことなんてなかったのに・・。
私は胸が小さくギュッと締め付けられた。
どうしよう・・。
私、お兄ちゃんに避けられたの・・?
その後のお母さんの話なんて、耳に入ってこなかった。
頭の中が真っ白になって、何も考えられなかった。
「さくら、ボーッとしてないで早く準備しなさい」
「・・・」
私は、お母さんの言葉になんの反応もできず、ただ一点を眺めることしかできなかった。
「さくら!遅刻するわよ!」
お母さんに怒られ、私はのそのそと動き出した。
・・お兄ちゃんが、私を避けてる?
ただ、それだけしか考えられなかった。
「おはよ!さくら!」
玄関のドアを開けると、大地が笑顔で立っていた。
・・そうだ、今日も大地が迎えに来てくれるんだった。
お兄ちゃんの事で、大地の事なんてすっかり忘れていた。
ごめん、大地・・。
忘れててごめん・・。
「おはよ、大地」
私は無理やり笑顔を作った。

