大地・・。
大地の言葉が嬉しかった。
大地は知ってる。
私がお兄ちゃんを好きで、泣いていた事、苦しんでいた事、大地に見られた。
だからお兄ちゃんの前で、そう言ってくれたことが、嬉しかった。
「・・・」
お兄ちゃんは、笑顔のまま、何も言わなかった。
「大地・・ありがとう」
「うん」
そう言って、大地は優しく微笑んでくれた。
「・・じゃあ俺、そろそろ帰るわ」
そう言って大地は、椅子から立ち上がった。
私は大地を玄関先まで案内して、靴を履いている大地の背中を見つめた。
大きくて、逞しい背中。
この背中が、好きだと思った。
「・・また明日も、迎えにきていいか?」
振り返りながら、不安そうに大地は聞いてきた。
「うん、いいよ」
私は笑顔で言った。
もしかしたら私、大地を好きになれるかもしれない。
お兄ちゃんのこと、忘れられるかもしれない。
「気をつけて帰れよ」
いつの間にか、お兄ちゃんが後ろに立っていた。
お兄ちゃんは、私の頭を撫でながら言った。
せっかく、お兄ちゃんのこと、忘れられそうだと思ったのに、頭を撫でられて嬉しかった。
胸が締め付けられた・・。
「お兄さん」
「ん?」
「さくらに、触らないで下さい」
「・・・」
お兄ちゃんは、無言で私の頭から手を退けた。
少し、触られていた頭が寂しく感じた。
それから大地は、じゃあまた明日な、と言って帰っていった。

